冷血 上(高村薫)12/15読了
『レディ・ジョーカー』(1997)『太陽を曳く馬』(2009)に続く、"合田雄一郎"シリーズ最新刊!
2002年クリスマス前夜。東京郊外で発生した「医師一家殺人事件」。衝動のままATMを破壊し、通りすがりのコンビニを襲い、目についた住宅に侵入、一家殺害という凶行におよんだ犯人たち。彼らはいったいどういう人間か?何のために一家を殺害したのか?ひとつの事件をめぐり、幾層にも重なっていく事実。都市の外れに広がる<荒野>を前に、合田刑事は立ちすくむ― 人間存在の根源を問う、高村文学の金字塔!
読み終えた後に「虚無」という言葉が頭に浮かんだ。人の「生死」って何なんだろうって思ってしまった。それと同時に日本の警察、検察、裁判ってこうなっているのかと改めて知らされた。殺したのが100%確実な犯人に対して、あれだけの時間を労して犯意を固めなければならないのか、そして起訴、裁判、死刑判決から死刑執行までにどれだけの時間と労力とお金が掛かるのか。
『冷血』というタイトルを付けるだけあって、カポーティの『冷血』に構成はよく似ている。カポーティの方はもうあまり細かいところは覚えていないのだが、本作ほど思念的ではなかっただろう。『レディ・ジョーカー』ももう少しエンタメ寄りだったんじゃないかな。
カポーティと同じタイトルを付けるというのもいい度胸だと思うが、個人的にはカポーティの方が数段面白かったな。
高村薫はこのままこういう路線で行くんだろうか。それはそれでもいいと思うが、付いてこられる読者は減るだろうな。
- 作者: 高村薫
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