横道世之介(吉田修一)★★★☆☆ 10/25読了

横道世之介
長崎の港町生まれ。その由来は『好色一代男』と思い切ってはみたものの、限りなく埼玉な東京に住む上京したての18歳。嫌みのない図々しさが人を呼び、呼ばれた人の頼みは断れないお人好し。とりたててなんにもないけれど、なんだかいろいろあったような気がしている「ザ・大学生」。どこにでもいそうで、でもサンバを踊るからなかなかいないかもしれない。なんだか、いい奴。

吉田修一が1968年生まれで、私は1967年生まれなので、著者の分身でもある横道世之介が大学時代を過ごしたのは、私が大学時代を過ごした時期とほぼ重なるはずだ。この本を読みながら懐かしい思いでいっぱいになった。
世之介が大学入学で上京してからの一年が淡々と綴られているのだが、世之介の憎めないキャラクターの良さもあって、実に楽しく読める。世之介と関わり合いを持った人たちの20年後が時折挿入されるのも巧い構成だ。この、周りの人たちがのちに主人公のことを思い出すという構成は島田虎之助の『ダニー・ボーイ』にも似ている。
高村薫の後だっただけに読んでいて実に和んだw。

横道世之介
横道世之介
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