どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?―現代将棋と進化の物語(梅田望夫)★★★★☆ 12/12読了

問題が難解なほど、 勝負が長引くほど、 この人は嬉しそうである。 激化する競争の渦中で語られる棋士たちの言葉。『シリコンバレーから将棋を観る』著者、待望の最新刊!! 「いつも思うのだが、羽生の手にかかると、森羅万象、複雑な事象が、じつにシンプルなものに見えてくるから不思議である。」(本文より)勝負師、研究者、芸術家の貌を併せ持ち、40歳の今も最高峰に立つ、「考える人」。その真の強さとはいったい何か? 10篇の「観賞」と「対話」が織り成す渾身の羽生善治論。

羽生善治論」とあるけど、特にそういう風には読まなかった。むしろ副題の「現代将棋と進化の物語」の方が内容に近いだろう。
色々な角度から楽しめる結構贅沢な本になっている。羽生はもちろんのこと5人の対戦相手の人となりを知ることができて興味深い。
でもやっぱり一番楽しめるのは普通の観戦記よりも対局者の生の感想を聞けることだろう。この局面ではどういうことを考えていたとか、どういう準備をして臨んだのかとか。対戦相手の1人である山崎に「羽生さんがこの手を○○分で指したのがすごい」というような発言があったが、指し手のすごさだけでなく、決断に至るまでの時間が短いというすごさを指摘していたのが新鮮だった。
二手目「8四歩」問題にも、将棋の進化(深化)という点で驚かされた。プロ棋士はすごいなあとは思うけど、そこまで考えないといけないんじゃ、自分はアマチュアで良かったなあと思う。
ネットを通じて将棋を楽しむ手段が格段に増えていることにも言及している。確かにチャット解説やUstream配信など、昔では考えられなかった手法がどんどん取り入れられている。
そして、ここにきて「将棋世界」の電子書籍化である。第○図という図面の盤面上で指し手が動くのは画期的だよな。ちょっと感動した。
将棋という古めかしいゲームが、ネットという最先端の技術と親和性が高いというのも面白い現象である。この本を読んでみて、将棋界の将来って意外と面白そうだなと感じたね。

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