子供たち怒る怒る怒る(佐藤友哉)★★★☆☆ 9/8読了

ぼくが転入してきたクラスで行われていた、ゲーム。それは異形の連続殺人者・牛男の次の犯行を予測しあうことだった―。最初は面白半分だった。でも、いつしか、ぼくたちは引き返せない地点まで来てしまったんだ(表題作)。災厄が露にした、きょうだいの秘密(「大洪水の小さな家」)。教室で突如火を噴く、恵子のサブマシンガン(「慾望」)。デッドエンドを突き抜ける、六つの短編。

買うだけ買って読んでおらず、ストーリーセラーとストーリーセラー2に掲載された小説を読んでからこちらに手を付けた。
ストーリーセラーに掲載された小説は、ミステリーだけれどもミステリーのコード(作法、決まりごと)を壊そうしているように見受けられた。本作はさらにすごい。世の中のコードや小説のコードまでも壊そうとしているように思える。機関銃でクラスメートを殺しておいて、人を殺すのに意味なんてありませんよとうそぶく少年・少女が出てくるからね。
他にも、ひどい境遇の子供がひどい仕打ちに遭う話や連続殺人者・牛男の残酷きわまりない犯行描写など、「俺、なんでわざわざこんな小説読んでるんだろう?」と思いたくなるようなグロい描写がかなり出てくる。
暗澹たる気持ちになりながら最後の短編「リカちゃん人間」に辿り着く。この話もひどい話なのだが、最後の1行でガラッと景色が変わるのだ。虐げられてきた子供たちへの一筋の光明となるこの最後の1行のおかげでなんか救われた気がした。
この1行は「リカちゃん人間」という話の最後の1行なわけだが、同時にこの短編集の最後の1行でもある。そういう意味では、順番に読んで行って、最後にこの1行に辿り着くというのが正しい読み方なのだろうと思う。

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