翻訳文学ブックカフェ2(新元良一)★★★☆☆ 12/11読了

第2弾ということで面白さは安定している。何人かは前作に引き続いての登板だが、私が楽しみにしていたのは堀江敏幸沼野充義。期待通り、この二人の話は興味深かった。

まず認識すべきなのは、ロシア・東欧だけに限ったことじゃなくて、東南アジアやアフリカでもどこでも、面白くて力のある文学があって、きちんと翻訳で紹介されれば日本でも読まれ、そのおかげで日本がちょっと豊かになるはずのものがいっぱいあるっていうことです。たくさん売れなくてもいいから、それを少しずつでも着実に紹介し続けることが大事だと思うんです。

ある作家のある作品が好きだと、親しい友達に話す程度なら別ですけれど、それについて公の場で、責任を持って語ろうとするなら、その人の作品は時間が許すかぎり、手に入るかぎり、全部読む。なぜその人がこの作品を書くにいたったかは、年代順に読んでいって、変化と成長を辿らないかぎり、理解できないところがある。責任持って書けないですよね。もちろん書評のなかでは、そうした下準備の跡は消しますし、翻訳をするにあたっても、過去の作品解釈に引きずられすぎないようにはします。でも、繰り返しますが、事前準備はあって当然だと思います。あとで知らんぷりすることを前提にね。

前者が沼野充義の話で、後者が堀江敏幸の話。どちらの話からも「プロ意識」が感じられる。そんな一方で、翻訳家になった経緯を尋ねると、結構何となくなっちゃったとか、消去法でいったら他に選択肢がなかったなんて言う人が多い。人生って案外そういうところも面白いんじゃないかなと思う。


話は逸れるが、『ウェブ時代をゆく』を読んで、「好きなことを貫いて好きなことを仕事にしたいんだけど、何が好きなのかがよく分からないから、とりあえずアルバイトします」なんて若者が増えたとしたら、こんなに残念なことはない。そんなことでグズグズしているよりも、人生は前に進めた方がいい。そこから色々な出会いやきっかけが生まれたりするかもしれないからね。


翻訳文学ブックカフェはこれで一段落だそうだが、そう言わずに第3弾も是非出して欲しいね。

翻訳文学ブックカフェ2
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