剛心(木内昇)★★★★☆ 2/12読了

日本近代建築の雄、妻木頼黄(よりなか)。
幼くして幕臣の父を疫病で亡くし、維新後に天涯孤独の身となり、17歳で単身渡米。
のちにコーネル大学で学んだ異才は、帰国後にその力量を買われ、井上馨の「官庁集中計画」に参加。
以来、官吏として圧倒的な才能と情熱で走り続ける妻木の胸には常に、幼い日に目にした、美しい江戸の町並みへの愛情があふれていた。
闇雲に欧化するのではなく、西欧の技術を用いた江戸の再興を。
そう心に誓う妻木は、大審院、広島臨時仮議院、日本勧業銀行日本橋の装飾意匠をはじめ、数多くの国の礎となる建築に挑み続ける。
やがて、数々の批判や難局を乗り越え、この国の未来を討議する場、国会議事堂の建設へと心血を注ぎこんでいくが……。
外務大臣井上馨、大工の鎗田作造、助手を務めた建築家の武田五一、妻のミナをはじめ、彼と交わった人々の眼差しから多面的に描き出す、妻木頼黄という孤高の存在。
その強く折れない矜持と信念が胸を熱くする渾身作、誕生!

『万波を翔る』の田辺太一に引き続き、本作も実在するけど、一般的にはあまり有名ではない妻木頼黄(よりなか)という建築家が主人公。こんな凄い人がいたんだね。全く知らなかった。史実を追いながら、物語としても読み応え十分。最後の方は胸が熱くなった。私には馴染みのある赤レンガ倉庫や神奈川県立歴史博物館も妻木頼黄の作品だった。旧日本勧業銀行本店、現在の千葉トヨペット本社の建物は機会があれば見に行ってみたい。日本橋の装飾意匠も彼の作品だが、上に高速道路が通っている現在の景観を見たらどう思うだろうね。