万波を翔る(木内昇)★★★☆☆ 3/21読了

開国から四年、幕府は外国局を新設したが、高まる攘夷熱と老獪な欧米列強の開港圧力というかつてない内憂外患を前に、国を開く交渉では幕閣の腰が定まらない。切れ者が登庸された外国奉行も持てる力を発揮できず、薩長の不穏な動きにも翻弄されて…勝海舟、水野忠徳、岩瀬忠震小栗忠順から、渋沢栄一まで異能の幕臣そろい踏み。お城に上がるや、前例のないお役目に東奔西走する田辺太一の成長を通して、日本の外交の曙を躍動感あふれる文章で、爽やかに描ききった傑作長編!

調べずに読んでいて、後で調べたら、主人公の田辺太一は実在の人物でした。外国奉行に仕える外国局の役人である田辺太一から見た維新前夜の日本外交物語である。今で言えば外務省の官僚のような立場なのだろうが、なかなかに破天荒な人物だ。曲がったことが嫌いで、上司にも平気で歯向かう。ただ、日本のためを思って、という気持ちに一本筋が通っている。学生時代に勉強した上辺の日本史を中から見ることができた気がして、とても興味深かった。政治家の顔色を伺って忖度するしか能のないどこかの国の役人に田辺太一の爪の垢を煎じて飲ませたいね。