モダンスイマーズ結成20周年記念公演「 ビューティフルワールド 」

純愛。
中年オタクと愛されない主婦の純愛。
セカイの端っこでお互いを必要とし合った二人の純愛。

純愛、なのか。

生まれてから何をやっても冴えない男がいた。もう40を越えていた。彼女もいない。仕事がデキるわけでもない。友達もいない。家では専らゲーム。アニメ鑑賞。このまま人生が終わり死んで行くのだろう。そう思っていた。
長年連れ添った夫から全く愛されていない妻がいた。日常から謂れのない言葉をぶつけられる。これは世にいうモラハラパワハラというやつではないか。言葉のDVではないか。いや、実際小突かれたりするときもある。DVだ。私は全く愛されていない。娘も私を馬鹿にしている。このまま人生が終わり死んでいくのだろう。そう思っていた。

二人は職場が同じだった。そこは女の夫が経営している職場だった。休憩の時に少し話すくらいの関係だ。次第に少しずつ関係を深めていく二人。女は家を飛び出し、男の部屋で住むようになる。セカイの片隅で寄り添うように暮らしていく二人。
純愛。

この二人のセカイに何が残るのか。


作・演出:蓬莱竜太
出演:
津村知与支 小椋毅 生越千晴 古山憲太郎 西條義将(以上モダンスイマーズ) / 吉岡あきこ 成田亜佑美 / 菅原大吉

会場:東京芸術劇場シアターイース

ハイバイを筆頭にして、引きこもりを題材にした芝居は山ほどあるので、そこに新鮮味は全くない。ただ、先日の、父親が40歳過ぎの引きこもりの息子を殺してしまった事件とあまりに近いので、そこに同時代性を感じざるを得ない。
成り立ち的には暗い話ではあるのだが、随所に笑いもまぶしてある。西條さんが菅原さんと相撲を取るシーンは、10周年記念公演での古川さんとの相撲のシーンの再現だよね。
高倉健太役の西條さんが終盤で色々バレて困ったことになった時の菅原さんの「メチャクチャ器用じゃないか~」には大笑いした。
菅原さんはさすがの上手さ。吉岡さんも熱演だったね。モダンメンバーも安定していたが、生越さんはまだまだかなあ。激昂して怒鳴るときに抑揚や緩急がなくて一本調子なので、ただうるさいだけになっちゃうんだよな。
某評論家がツイッターで激賞していたので、ハードルを上げて観ていたけど、そこまでではなかったかな。いや、十分に面白かったけど。

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