パリのすてきなおじさん(金井真紀、広岡裕児)★★★☆☆ 1/1読了

難民問題、テロ事件、差別の歴史……。 世界は混沌としていて、人生はほろ苦い。 だけどパリのおじさんは、今日も空を見上げる。 軽くて、深くて、愛おしい、おじさんインタビュー&スケッチ集 中島京子さん推薦! 「パリは人種のるつぼ、おじさんのサラダボウルだ。 読めば21世紀の隣人の姿が浮かび上がり、 クスクスも赤ワインも、より味わい深くなる。」

2019年の1冊目はこちら。イラストはカラーだし、判型も独特で、所有する喜びのある本である。内容もなかなか良かった。著者のおじさんを探すアンテナが冴えてるし、おじさんたちの言葉に含蓄がある。

セバスチャン・ドダール
「二分考えれば済むことを、みんな大げさに考えすぎだよ」
ステファン・ジラール
「ワインを楽しむコツはなんですか?」
「香りがいちばん大事だからね。まず香りに集中すること。そこにエレガントさはあるか。強過ぎる香りもいけない。とにかく香りを感じるんだ。それからあとは・・・好奇心を持つこと」
ジャッキー・リボー
「テクニックを見せてはいけない。一に食材、二に食材、三に食材だ。食材をどう活かすかだけを考えなさい。テクニックは食べられない」
朱人来
「軍事力とか、経済力とか、そういうことは重要ではなく、そこに住む人が内面的に満たされていることが一番強い。そういう世界が理想だと思います」
レ・ディン・タイ
「大事なのは将来ではない。いまですよ。いま、この瞬間に大事なものをちゃんと愛することです」
レワン・ハッサン
「この国に来て、わたしは学問の意味を知りました。なぜ学ぶのか。博士になるためではない。世界を理解するため、自分で考えるためです」

最初は何気なく読んでいたのだが、後半になると、フランスとアルジェリアの関係の話やホロコーストの話、大統領選の話や難民の話や同時多発テロの話など、なかなかに硬派な話も増えてくる。おじさんたちの話を通じて、少しフランスを身近に感じることができた。

パリのすてきなおじさん

金井 真紀 柏書房 2017-10-24
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by ヨメレバ