彼方の友へ(伊吹有喜)★★★★☆ 2/20読了

平成の老人施設でまどろむ佐倉波津子に、赤いリボンで結ばれた小さな箱が手渡された。「乙女の友・昭和十三年 新年号附録 長谷川純司 作」。そう印刷された可憐な箱は、70余年の歳月をかけて届けられたものだった。昭和初期から現在へ。雑誌の附録に秘められた想いとは―。

竹久夢二中原淳一が活躍した少女雑誌「少女の友」(実業之日本社刊)を題材にした小説で、時代背景その他の点で中島京子の『小さいおうち』とよく似ていた。似ているからダメだと言う気は毛頭なくて、これはこれでとても面白かった。主人公佐倉波津子をはじめとして人物もよく書けており、あの時代の楽しさも悲惨さもよく伝わってくる。読んでいて、随所で胸が熱くなった。「彼方の友へ」というタイトルもいいし、「友へ、最上のものを」という標語もいいね。

彼方の友へ
彼方の友へ伊吹 有喜

実業之日本社 2017-11-17
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