永い言い訳(西川美和)★★★★☆ 9/9読了

長年連れ添った妻・夏子を突然のバス事故で失った、人気作家の津村啓。悲しさを“演じる”ことしかできなかった津村は、同じ事故で母親を失った一家と出会い、はじめて夏子と向き合い始めるが…。突然家族を失った者たちは、どのように人生を取り戻すのか。人間の関係の幸福と不確かさを描いた感動の物語。

最初は、なんか佐藤正午の『鳩の撃退法』にちょっと似てるなあとか、主人公の中2病振りにイライラもしていたのだが、途中から完全にのめり込んだ。感情移入しすぎて、最後の1行を読み終えたときに、嗚咽をこらえることができなかった。家で読んでてよかったよ。
村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』に出てくる「人というものはあっけなく死んでしまうものだ。人の生命というものは君が考えているよりもずっと脆いものなんだ。だから、人は悔いの残らないように人と接するべきなんだ。公平に、できることなら誠実に」という一節をまた思い出した。
本作にも「他者の無いところに人生なんて存在しないんだって。人生は、他者だ。」とある。どんなに不細工な生き方だとしても、生きてる限り生きなきゃならない。誰かのために。そして、次の一節は胸に沁みた。「あのひとが居るから、くじけるわけにはいかんのだ、と思える「あのひと」が、誰にとっても必要だ。」

永い言い訳
永い言い訳西川 美和

文藝春秋 2015-02-25
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