東京プリズン(赤坂真理)★★★☆☆ 11/10読了

戦争は忘れても、戦後は終らない……16歳のマリが挑んだ現代の“東京裁判"を描き、朝日、毎日、産経各紙で、文学史的事件と話題騒然! 著者9年ぶりとなる感動の超大作。

作中にこんな一節がある。

「これ」を考えると思考停止になる、というツボがある。スペンサー先生はそこに触れてくる。おそらく私だけでなく、日本人全体にそのツボがある。そこに触れられるとフリーズしてしまう。日本の中学校では、近現代史に触れることは暗黙の、公然とした、タブーだった。事実は載せないわけにいかないので教科書には載っている、けれど誰もがそのことにおいては申し合わせたように足並みをそろえ、カリキュラムは卑弥呼から始めて明治維新あたりで時間切れになるようになっている。この連携は、見事というよりほかなかった。

「暗黙の、公然とした、タブー」である近現代史、つまりは天皇問題に踏み込んだのが本書ということになる。天皇の戦争責任にまで踏み込んだ意欲的な作品だ。
最初はかなり取っつきにくかったが、途中からやっと入り込めた。「あ・じゃ・ぱん」(矢作俊彦)や「東京セブンローズ」(井上ひさし)のように、この本も日本人なら読んでおいた方がいいかもしれない。16歳のマリがディベート形式の疑似「東京裁判」に臨むシーンは「ソロモンの偽証」を読んだ後だったので、不思議な符合だった。

東京プリズン

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