事件の封印が次々と解かれていく。私たちは真実に一歩ずつ近づいているはずだ。けれど、何かがおかしい。とんでもないところへ誘き寄せられているのではないか。もしかしたら、この裁判は最初から全て、仕組まれていた―? 一方、陪審員たちの間では、ある人物への不信感が募っていた。そして、最終日。最後の証人を召喚した時、私たちの法廷の、骨組みそのものが瓦解した。
最後の証人が誰かは普通に読んでいればみんな分かるだろう。ただ、陪審員たちの最後のコメントまでは予測できなかった。
中学生たちが真相究明のために裁判を起こすというのがこの小説の最大のミソであり肝だよな。本当の裁判ではないから、逆に色々できたし、リーガル・ミステリーを分かりやすく楽しめるという利点もあった。
ただ、扱っている題材は重い。神原和彦の大出俊次への糾弾や三宅樹里の捨て身の告白などは鬼気迫るものがあった。それ以外にも胸を打つ証言はいくつもあった。いじめ問題はもちろんのこと、学校制度の問題やマスコミの問題など、筆者は多くの問題を提起し、それを小説という形にして多くの人間に届けることに成功した。
中学生たちの成長物語としても読める。あんな中学生いないよなとも思うが、彼らはこの裁判を通じて確実に成長した。全3冊を通じて、ずいぶん長い時間を藤野涼子や野田健一、神原和彦たちと過ごしたので、読み終わったときには何だか寂しかった。
いじめ等の様々な問題を小説というエンターテインメントとして昇華させた手腕はさすがとしかいいようがない。読み物として存分に面白かったし、傑作と言っていいだろう。
- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/10/11
- メディア: 単行本
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