サスペンデッズ 第10回公演『カラスの国』@シアタートラム

路地裏にカラスが舞い降りて人になるのを見た。一瞬目が合ったけれど、カァーと一声鳴いて地下鉄に消えた。言うなよと聞こえたので今まで誰にも言わなかったが、今日ベランダにやって来たカラスがどうやらあのときの人物のようで、同じ声でカァーと鳴き、僕をどこかに誘っている。きっと僕の番なのだろう。


作・演出:早船聡
出演:佐野陽一 / 伊藤総 / 佐藤銀平 / 石村みか / 柿丸美智恵 / 冠野智美 / 渋谷はるか / 白州本樹 / 三田村周三


会場:シアタートラム
日程:2011年3月17日(木)〜3月23日(水)

サスペンデッズの芝居を観るのは初めて。俳優陣もみな初めて。客席の年齢層は結構高かった。
舞台はホテルのロビーだが、ちょっと凝っている。通常の座席部分を削って、随分前まで舞台が来ており、その代わり舞台の左右にも座席が配置されている。そして、正面の座席に近い部分に二畳分くらいの正方形の穴が穿たれていて、その穴の周りには柵がある。どうやら地下へと通じているようだ。
開演前に作・演出の早船聡さんから挨拶。チラシにはこう書いてあった。

テレビなどであのような巨大な自然災害、そして必死に生きる人々を目にし、
今現在演劇をやる意味を様々に考えました。
正直なことを言えば、明確な答えは未だに出ませんが、
何かを想像し創造し想像してもらうことが、我々の出来るささやかなことであり、
人間がいついかなる時もすべきことではないかとの思いから、公演にのぞみました。

私も同意見である。もちろん被災地の人たちは非常に苦しい状況にある。でも我々まで暗い顔をして、何もかもを自粛して何になるだろう。節電や寄付など、出来ることをやったうえで、なるべく今まで通りに生活することが大事なことではないのだろうか。経済活動を停滞させない意味でも。
もちろん、被災地の人たちのことや余震のことを考えれば、気持ちも落ち込んでくるだろう。でも、家に閉じこもって思考を停止させてはいけないと思う。創造し、想像する力を失ってはいけないと思う。


話が逸れました。早船さんからは非常時の際の説明も詳しくなされた。
物語は、とある国にあるホテルの一夜の話。そこに明日の朝に商談を控えたビジネスマンや囚人護送係とその囚人が泊まりに来る。そのホテルには既にゴンドウという人物や謎の女も滞在している。そのホテルは20年前にあった姉妹誘拐事件に関係があるらしく、ゴンドウはそのことも調べているらしい。
ゴンドウ役の白州本樹さんがいい味を出していた。ちょっと韓国映画に出てくる俳優に似ていて、MONOの水沼健さんにも感じが似ている。話は途中から幻想味を帯びてきて、不思議な感じで終わる。でも随所にユーモアもまぶされていて、ただの暗い話ではない。初めて観たけど、なかなか面白かった。上演時間は1時間40分。


次回公演は8月にスズナリで。タイトルは『G(仮題)』。白州本樹さんは6月のONEOR8の公演にも出るようだ。そちらも楽しみだな。