パルコ・プロデュース「裏切りの街」

乱交パーティに集う男女を、リアルな会話で描いた作品『愛の渦』で、2006年に岸田戯曲賞を受賞した三浦大輔
彼が率いる劇団「ポツドール」の舞台は、セックスや暴力という題材の過激さ、リアルという表現の先鋭さで、常に物議をかもしてきました。
人間と人間関係を精緻に描写する台詞、こちらがいたたまれなくなるほどリアルに見せる驚異的な演出力、うますぎるほどうまい構成力を持つ類まれな才能・三浦大輔の書下ろし・演出作品が、ついにパルコ劇場に登場します。


キャストは演劇界屈指の俳優陣と注目の若手俳優たち。
まずは今や演劇界を代表する女優となった秋山菜津子。あらゆる演出家、作家の信頼を集め、話題の舞台への出演が続く彼女が、ついに三浦大輔の描く女性を演じます。
そして出演ドラマが立て続けに賞を獲得するなど、大注目の若手俳優田中圭。来春主演映画も控える、こちらも大注目の安藤サクラ。演劇界、映画界でも売れっ子の江口のりこ
さらに2006年「労働者M」以来の、外部の舞台出演となる松尾スズキ。役者としても異彩を放つ松尾の演技に、期待が高まります。
そして「ポツドール」の米村亮太朗と「ポツドール」の常連、古澤裕介が脇を固めます。


会場:パルコ劇場
公演日程:2010年5月7日(金)〜2010年5月30日(日)
作・演出:三浦大輔
出演:秋山菜津子田中圭安藤サクラ/古澤裕介/米村亮太朗江口のりこ松尾スズキ

久し振りのパルコ劇場。地下のベルギービールを飲ませるお店は別の店になっていた。
休憩を挟んで3時間超えと聞いていたので集中力を持続できるか心配だったが、結果的にはその心配は杞憂だった。結構あっという間に3時間は過ぎた。
裕一(田中圭)というフリーターと智子(秋山菜津子)という専業主婦がツーショットダイヤルで知りあうところから話は始まる。裕一には同棲している恋人の里美(安藤サクラ)がいるし、智子には夫の浩二(松尾スズキ)がいる。この裕一というのがフリーターとは名ばかりで実質は里美のヒモだ。一日中テレビを観ていて何もしていない。智子の方も何を考えているのかよく分からない。
この2人が出会って、そういう関係になって、どんどん深みハマって行く話なんだが、実は里美も浩二もダメ人間ということが分かってくる。というか、出てくる人間ほとんどがダメ人間なんだよな。
結局どうなるのかというと、どうにもならない。三浦大輔はチラシにこう書いている。

自分がやったことの責任もとらずに、決断を先送りして、逃げて、逃げて。
その果てには何があるのか。罪か罰か。
いや、意外に現実は生温い。
時間の流れに身をまかせていれば、なんとなーく帳尻は合わせられるものである、
それは「善」だろうか「悪」だろうか。
いや、振り子のように行ったり来たりする宙ぶらりんの状態が、人間だろう。

まさにそんなお芝居だ。時代を反映しているといえば反映しているのかもしれない。


秋山菜津子は初めて観たけど色っぽかったね。田中圭もなかなか上手かった。松尾スズキはさすがだったなあ。ぬるっとした演技が堪らないし、ちゃんと笑わせてくれるし、凄みも利かせられるんだよな。銀杏BOYZの音楽も良かったね。
舞台装置も凝っていたが、回り舞台になっていたから転換にちょっと時間がかかる嫌いはあった。あと、音楽を突然大音量で掛けるので心臓に悪かったw。
個人的にはなかなか良かったんだけど、夫婦とかカップルではあんまり観に行かないほうがいいんじゃないかなという気はする。