私の大学生活には華がない。特に女性とは絶望的に縁がない。三回生の時、水尾さんという恋人ができた。毎日が愉快だった。しかし水尾さんはあろうことか、この私を振ったのであった!クリスマスの嵐が吹き荒れる京の都、巨大な妄想力の他に何も持たぬ男が無闇に疾走する。失恋を経験したすべての男たちとこれから失恋する予定の人に捧ぐ、日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
森見登美彦のデビュー作。妻が面白かったというので、私も遡って読んでみた。完成度からすれば、後の作品の方が上であるのは間違いない。ただ、この作品があって、『四畳半神話大系』ができて、『夜は短し歩けよ乙女』につながるのだなと思うとそれなりに興味深い。やはり、デビュー作にはその作家の全てが詰め込まれているから。
本作で、そしてそれに続く作品で「非モテ男の妄想」を書きまくっていた森見登美彦も先月ちいさなかぐや姫モドキを伴侶に得てしまった。以下は本人のブログからの引用。
というわけで読者諸賢に御報告である。
森見登美彦氏は、二○○九年一月六日(生誕三十周年記念祭日)をもって独身貴族の地位を引責辞任し、ひよこ豆のように小さな嫁を迎え、ひよこ豆のように小さな家庭を作ることになった。
『太陽の塔』で登美彦氏を発見した古株の読者は登美彦氏を「裏切り者」と呼び、『夜は短し歩けよ乙女』によってたぶらかした麗しき乙女たちもそっぽを向くかもしれない。「登美彦氏の嫁になり隊」の人たちもサヨウナラ。そうなると、誰よりも哀しむのは出版社である。出版社の涙に濡れた道を、登美彦氏はてくてく歩いていく。そのかわり、もはや一人ではない。
最後に登美彦氏の言葉を伝えて、この報告を終わる。
「抜け駆け御免。ご意見無用」
結婚して作風がどう変わるか楽しみだな(変わらないかもしれないけど)。
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