一握の砂(石川啄木)★★★☆☆ 1/25読了

26歳で亡くなった天才歌人石川啄木の世界を忠実に伝えるのは朝日文庫版だけ! 初版の組みに戻し、啄木が発明した三行歌の美しさを再現する。現代人にも通じる啄木の深い哀しみをかみしめ、名著を味わい直す。約100年ぶりに啄木の意匠が蘇る。編者・近藤典彦。

「本邦初!初版本の体裁<二首一頁四首見開き>が文庫で読める!」という謳い文句で新聞に紹介されていたのを読んで「これは!」と思い買っておいた。
もちろん石川啄木の有名な歌は何首か知っている。だけど、この『一握の砂』がこれほど練りに練った構成になっているとは知らなかった。その辺のことは脚注や補注で理解できるようになっている。また、巻末には「啄木略伝」と「『一握の砂』ができるまで」も収録されており、啄木の人生(わずか26年!)や『一握の砂』の背景も読み取れるようになっている。
来年で『一握の砂』が刊行されてから100年が経つ。でも、読んでみると全然古びていないどころか、現代の閉塞感に実にマッチした歌が多いことにも気付かされる。「はたらけど/はたらけど猶わが生活楽にならざり/ぢつと手を見る」などその最たるものだろう。
歌集の最後には急死した長男への手向けの歌が8首収録されている。完璧をもとめた歌集の構成を壊してまで最後に載せた8首は実に痛切だ。最後の一首を引用する。

かなしくも
世明くるまでは残りゐぬ
息きれし児の肌のぬくもり

一握の砂 (朝日文庫)
一握の砂 (朝日文庫)石川 啄木

朝日新聞出版 2008-10-07
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