自らの作品を「長嶋家電文学」と称す著者が、現代文学で描かれる電化製品を熱く語り尽くす!こんな読み方があったのか!と、思わず目からウロコが落ちる書評(+映画評)18篇を収録。テレビにアイロン、加湿器、炊飯ジャーから電気シェーバーまで…「オール電化」な“異色”書評&エッセイ集。
思わず一気読みしてしまった。確かに目からウロコの書評本だな。小説に登場する電化製品にスポットを当てた書評集というのは前代未聞だろう。一見キワモノっぽいんだけど、実は結構スルドイ読みが入っていて、なーるへそと思わせる。
それにつけても著者の小説中の家電への傾倒ぶりは並みではない。例えば、吉田修一の『日曜日たち』からリモコンの部分を引用したのを受けて・・
「ほら、ここ押せばつく」
「さっき、そこ押したぞ」もう! このやりとりだけでご飯三杯食える(なにいってんだ俺)。
柴崎友香の『フルタイムライフ』からシュレッダーの場面を引用したのを受けた時など・・
柴崎友香は会社でのシュレッダー作業を連載小説の第一回の、それも冒頭に持ってきた。そのことは特筆すべきことだ。連載時、この冒頭に出会って、ほとんど身もだえするくらいに嫉妬した。俺がこれを書きたかった! と。
この家電に対する熱い萌え方と小説を分析する時の冷静さのギャップがいいんだよな。
そういえば、先日読んだ堀江敏幸の『未見坂』に「苦い手」という短篇があって、そこに電子レンジが出てくる。出てくるどころじゃなくて、電子レンジが主役と言ってもおかしくないくらいの存在感がある。長嶋有がこの小説を読んでどう思ったのかが気になるな。
電化製品列伝 | |
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