母を亡くしたのち、旅先から絵葉書をよこすようになった父。仄見える恋人の姿。ひとつ家族だった父娘が、それぞれの人生を歩みだす切なさ(「見知らぬ場所」)。母が「叔父」に寄せていた激しい思いとその幕切れ(「地獄/天国」)。道を逸れてゆく弟への、姉の失望と愛惜(「よいところだけ」)。子ども時代をともにすごし、やがて遠のき、ふたたび巡りあった二人。その三十年を三つの短篇に巧みに切り取り、大長篇のような余韻を残す初の連作「ヘーマとカウシク」。―名手ラヒリがさまざまな愛を描いて、深さ鮮やかさの極まる、最新短篇集。フランク・オコナー国際短篇賞受賞作。
もう、ため息が出るほど巧い。
読み終わってよくよく振り返るとハッピーエンドの話はなく、どちらかというと辛いエンディングが多い。でも読んでいる時はそれほど辛くは感じない。話の中には紆余曲折があって、単に辛いだけの話というものはないからだ。
人生の断片をこれほど鮮やかに切り取れる作家もそうそういないだろう。ジュンパ・ラヒリは確実に進化している。素晴らしい短篇集だ。
見知らぬ場所 (新潮クレスト・ブックス) | |
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