思い出トランプ(向田邦子)★★★★☆ 10/7読了

浮気の相手であった部下の結婚式に、妻と出席する男。おきゃんで、かわうそのような残忍さを持つ人妻。毒牙を心に抱くエリートサラリーマン。― 日常生活の中で、誰もがひとつやふたつは持っている弱さや、狡さ、後ろめたさを人間の愛しさとして捉えた13編。

10月10日(金)から青山円形劇場で始まるONEOR8プロデュース公演『思い出トランプ』を観に行く前の予習として再読した。
話は大体覚えていたが、それでも新鮮に読めた。なんか人間の「生理」に訴えかけてくるんだよな向田邦子の小説って。宮本輝の短編もそうだけど、向田邦子の短編も血が通ってるという気がする。人生の機微をこれほど鮮やかに描いている短編集もそうそうないだろう。
舞台で主演の田中麗奈は「大根の月」の英子の役をやるらしい。私もこの短編集の中では「大根の月」が一番好きだが、脚本ではきっといくつかの話が混ぜ合わさっているのだろう。
向田邦子のこの完璧とも言える短編集を、作・演出家の田村孝裕がどう料理するか実に楽しみだね。