なつかしい芸人たち(色川武大)★★★☆☆ 6/13読了

どこまでも世間と合わない自分だから、いずれは窮死するのだろう。そう感じながら、少年は浅草六区を歩いていた。昭和の大衆演劇全盛時代、ここには彼の“同胞”がいた―。「麻雀放浪記阿佐田哲也」として人気作家となった後も、異端の芸人に惹かれ続けた色川武大エノケン、ロッパ、時代を下ればトニー谷、五代目柳朝…。はみ出し者への共感が滲む、奇人・落ちこぼれ36の肖像。

取り上げられている芸人たちが古すぎて知らない人ばかりなんだけど、読んでいると不思議と面白い。きっと、色川武大の芸人たちへの思いが詰まっているからだろう。
一番面白かったのが「ヒゲの伊之助」の話。昭和33年の栃錦・北の洋戦。伊之助の軍配は栃錦だったが、物言いが付く。審判団の協議の結果、評決は行司差し違えで北の洋。そのことを知らされた伊之助は「― おら、いやだい!」と叫んだという。「いやだい、いやだい ―!」と言って土俵を掌でばんばん叩いたりもしたそうだ。読んでいて「ホントかよ?」と目を疑いたくなったが、さすがに嘘は書かないだろうから本当なんだろう。その現場を見てみたかったな。

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