ミステリー作家ポールは悲劇の人だった。少年の頃、事故で両親をなくし、その直後、目の前で姉を惨殺されたのだ。長じて彼は「恐怖」の描写を生業としたが、ある日、50年前の少女殺害事件の謎ときを依頼される。それを機に“身の毛もよだつ”シーンが、ポールを執拗に苛みはじめた―人間のもっとも暗い部分が美しく描かれる。
とにかく怖い。ホラー小説ではないんだけど怖い。
評価が高いだけあって実に良くできている。50年前の少女殺害事件の謎解きは十分に本格ミステリーだし、それと並行して徐々に明らかになる主人公ポールの過去が気になって仕方がない。そして、少女殺害事件の真相が明らかになると共にポールの過去も明らかになる。事件の真相よりもポールの過去に驚愕した。「何てことだ」と思わず本を持つ手を下ろしてしまった。実に恐ろしく、そして素晴らしい小説である。
夜の記憶 (文春文庫) | |
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