『長いお別れ』を読んだのは遥か昔なので内容は全く覚えていなかった。だからクライマックスのどんでん返しはなかなか楽しめた。ただ、途中が結構長いんだよな。あとがきで村上春樹も指摘しているが、本作は『グレート・ギャツビー』との類似点が多い。「ギャツビー」が退屈だった私にとっては、本作の「ギャツビー」と似ている箇所が要するに退屈だった。
ご多分に漏れず、私も例の「To say goodbye is to die a little.」をどう訳すのか気になっていたのだが、清水俊二訳とそれほど違いはなかった。まあ、他に訳しようがないのかもしれないが。この文章に関してはあとがきでも触れているが、そもそもチャンドラーが作った台詞ではなく、コール・ポーターの曲「Everything We Say Goodbye (I Die a Little)」から来ているのではないかということで、あまり突っ込んだ話はしていない。
チャンドラーといえば、このように名台詞で有名だが、細かいところにいちいち気が利いていて、読んでいてニヤリとすることが多い。私が一番好きなのは、億万長者ハーラン・ポッターとの会見の後にポッターの娘のリンダ・ローリングの運転手である黒人で中年のエイモスに車で送ってもらった時のやりとりだ。
表に出ると、エイモスがキャディラックを停めて私を待っていた。そしてハリウッドまで送り届けてくれた。私は1ドルを渡そうとしたが断られた。T・S・エリオットの詩集を買ってあげようかと持ちかけてみた。それなら持っていると彼は言った。
自分が作家ならこんな一節に憧れるだろうな。
ロング・グッドバイ | |
レイモンド・チャンドラー 村上 春樹 早川書房 2007-03-08 売り上げランキング : 953 おすすめ平均 他の作品もぜひ村上訳で読みたい! サスペンスを題材とした純文学 マーロウという探偵の魅力 Amazonで詳しく見る by G-Tools |