グルメ探偵、特別料理を盗む (ピーター・キング)★★★☆☆ 7/7読了

ぼくはグルメ探偵。料理関係が専門で、ライバル店で大人気の特別料理のレシピを探り出すという依頼を受けたところだ。さっそく店で至福の味を堪能し、独自の技を駆使して食材、調理方法を突きとめた。調査結果を依頼人に伝えてひと息ついていると、次の依頼人が…あの料理を作ったシェフじゃないか!店の営業妨害をしている人物を見つけてくれ?それって、ぼくのことか!食欲を刺激する美食満載の新シリーズ登場。

巻き込まれ型探偵のユーモア・ミステリの範疇に入ると思われるが、この分野に関しては、パーネル・ホールスタンリー・ヘイスティングズものに一日の長がある。ただ、「グルメ探偵」ということで、料理やワインがふんだんに出て来るところがかなりそそられる。また、いいワインばっかり飲んでんだよなあ、羨ましい。

ソムリエに鳥料理にあるワインをいくつかすすめられたが、コシュ・デュリ・モンラッシェに決め、食事中はずっと同じワインで通すことにした ― これもメインの味の分析のため。

<ル・トルーケ・ドール>というレストランの「ワゾ・ロワイヤル」という特別料理のレシピを探りに行ったときに飲むのがコシュ・デュリのモンラッシェ!

そこにウェイターが最初の料理を持ってきたので、会話はいったん打ち切りとなった。オムレツの定番、刻んだエスカルゴとニンニクとクルミの入ったブルゴーニュ風だ。ソムリエの持ってきたワインはムルソーだった。薄っぺらで硬い味だと感じることがあるので、自分ではあまり選ばないワインだ。だが、この産地の最高峰ともいえるドメーヌ・デ・コント・ラフォンだった。さわやかで軽やかながら、独特の濃厚な味わいがあり、バランスのいいワインだ。

<ル・トルーケ・ドール>の女性支配人にランチに誘われたときにオムレツと一緒に供されたのが、コント・ラフォンのムルソー! そしてメインの牛肉のパイ包みのときにはこれだ!

ぼくたちが黙って食べることに集中していると、ソムリエがロマネ・コンティをそそぎに来た。フランスの誇る最高の赤ワインだ。ラベルをちらりと見ることに成功した。なんと一九八五年。ここ十年で一番の当たり年と言われているはずだ。

ああ、ロマネ・コンティは無理にしても、コント・ラフォンのムルソーくらいはいつか飲んでみたい。

ミステリの世界でグルメといえばやはり「ネロ・ウルフ」である。本作のグルメ探偵は古今の名探偵好きでもあるので、当然「ネロ・ウルフ」の名前も出て来る。ただ、ミステリとして比べた場合、本作はレックス・スタウトの「ネロ・ウルフ」シリーズの足下にも及ばないと言わざるを得ない。まあ、料理とワインの描写を楽しみつつ、ちょっとドジな探偵の活躍も見守る程度の読み方が正解かもしれない。

グルメ探偵、特別料理を盗む
グルメ探偵、特別料理を盗むピーター キング Peter King 武藤 崇恵

早川書房 2006-05
売り上げランキング : 50728

おすすめ平均 star
starごちそうさまです
star読後はレストランへ!
starお腹がすくミステリ

Amazonで詳しく見る
by G-Tools