世界の果てのビートルズ(ミカエル・ニエミ)★★★★☆ 4/1読了

凍てつく川。薄明りの森。北の果ての村に響く下手くそなロック。笑えるほど最果ての村でぼくは育った。きこりの父たち、殴りあう兄たち、姉さんのプレーヤー、そして手作りのぼくのギター!世界20カ国以上で翻訳されたスウェーデンのベストセラー長篇。

少年の成長物語ということで、読みながら『アンジェラの灰』も思い出していたが、『アンジェラの灰』ほどの貧困生活というわけではない。『アンジェラの灰』はアイルランド、本作はスウェーデンの北の果てが舞台という違いもある。スウェーデンと日本との文化の違いみたいなところも興味深かった。
一応時系列に並んでいるが、20章ある話はそれぞれが独立したエピソードになっている。これらのエピソードが、時にユーモラスに、時に幻想的に、時に青春の甘酸っぱさをともなって展開される。
とにかく少年の一族郎党みなサウナと酒が好きで、サウナにどれだけ長く入っていられるかという競争をしたり、密造酒を死にそうになるまで飲んだりする。

ぼくは少々酔っぱらった感じがして、よろよろと外に出た。男が数人、雪の吹きだまりの前に立っており、小便をすませたところなのか、これからするところなのか思い出そうとしていた。

このくだりでは思わず声を出して笑ってしまった。

国は違うし、文化も違うけど、少年時代の思い出というのはどこか似通ったものがあるなあと、自分の少年時代を思い出しながら感じていた。それにしても、板きれとゴムひものギターをかき鳴らす主人公マッティの像はいつまでも脳裏から消えそうにないな。まだ、それほど話題になっていないようだけど、この本はお薦めですよ。

世界の果てのビートルズ 新潮クレスト・ブックス
世界の果てのビートルズ    新潮クレスト・ブックスミカエル・ニエミ 岩本 正恵

新潮社 2006-01-30
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